コラム 西選手の機材選び

西加南子選手は女子プロロード選手です。四半世紀にわたり最前線で活躍するベテラン選手であります。その戦績を凝縮して書き留めると、2009年の全日本選手権優勝、2010年、2011年、2014年ジャパンカップ優勝…。もちろん他にも優勝や入賞のレースは数知らず、ナショナルチーム選出や海外遠征など、豊富な経験と実績で、常に女子ロード界を牽引してきた大選手です。拙い文章で文字にするとありがたみが薄れますが、これは並大抵のことではありません。大きな怪我もなくキャリアを重ねた西選手は、やはりグレートなお方です。そんなプロフェッショナルでも落車の危険は常に付き纏います。下の写真は2007年の全日本選手権。大分県オートポリスでの落車直後のショッキングな一枚。これも西選手のキャリアを語るエピソードのひとつです。

この時はさすがに記憶も飛んだそうです  (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp

そんな西選手がトッププロとして最高のパフォーマンスを維持するためには、永年の選手経験で培ったコンディション管理があります。また、西選手は機材に対する一切の妥協をしない厳しさもあります。機材との相性はパフォーマンスに直結することを、知識として、経験として知っているからです。

弊社は2017年の6月より西選手のサポートを始めましたが、機材供給にも色々と順番がありまして、まずはフレームからスタートしました。皆さんご存知の通り、西選手は現在メインで使用するDE ROSA PROTOSのほか、SK PininfainaとアルミのSCANDIUMを使い分けています。2017年時点でSK PininfarinaとSCANDIUMを投入したのですが、サイズオーダーのSCANDIUMは全く問題なく供給ができました。それは西選手が確固たる自身のジオメトリを持っていたからです。イタリアはミラノのDE ROSAもその通りに作れば良いだけですからまったく問題なし(サイズオーダーBLACK LABELの良いところです!)。問題はカーボンのSK Pininfarinaでした。使用するフレームは既存サイズからチョイスするわけですが、西選手理想のジオメトリに近いふたつのサイズの試乗車を用意して、それぞれにパーツを付け替えてテストを繰り返し、レースで使うサイズを決めました。それでも微妙な感覚があるようで、テストに相当の時間を要したことを記憶しています。

BLACK LABEL のSCANDIUM。金属フレームでも戦闘力はあります!

フレームは決まりました。続いてのパーツチョイスはサドルです。弊社としては西選手に取扱いブランドであるselleITALIAを使って欲しいわけです。でもサドルといえば身体に触れる重要な機能パーツです。西選手は長い間某社のサドルに慣れ親しみ、当時の愛用サドルが身体の一部分であるとおっしゃる(暗に断られたわけです笑)。しかし、弊社も問屋業であるだけに、そうは問屋が卸しません。西さん、食わず嫌いはいけませんよとばかり、2018年シーズンからはselleITALIAのサドルに乗り換えていただくべく、2017年の年末、埼玉県草加市の弊社にご足労いただきました。乗り換え作戦の開始です。

idmatch Smart Caliper

selleITALIAの特徴(のひとつ)は、豊富なラインアップです。サドルは「サドル探しの旅」と例えられるくらい、なかなか身体にマッチしたサドルに巡り合えないものです。それはヒトのカラダが千差万別だから。selleITALIAが数多くのサドルを展開する理由は、サイクリストに「ドンピシャ」のサドルを提供するためにちゃんと意味があるのです。しかし種類だけそろえて「ハイ、終わり」では無責任です。そこでサドル選びの指標としてselleITALIAが用意したサドル選びのシステムがidmatch。2012年のスタート時点では、身体の計測データをオンライン入力して、身体にマッチしたサドルのカテゴリーを導きだすものでしたが、最新のidmatchは“idmatch Smart Caliper”を使えば、わずか3アクションで身体にマッチしたサドルカテゴリーが分かるしくみです。カテゴリーとは、同じタイプのサドルであっても、主な用途やレールやシェルの素材、価格などから選べるようにカテゴライズされた状態を指します。最終的にどのサドルを選択するかは、idmatchを利用したサイクリストに委ねられるわけです。

前置きが長くなりましたが、ある意味頑固である西選手にselleITALIAとidmatchを説明、納得していただき、idmatch Smart Caliperによる西選手のサドル探しが始まりました。

まずは骨盤の幅を測定。

続いて片方の太腿の幅を測定。

最後に立位前屈の骨盤角度を測定します。

測定したデータをidmatch Smart Caliperに入力。

導き出されたカテゴリーはL3でした。坐骨の幅が広く、ライド時に骨盤の前傾が大きいライダーに適したサドルを選択しなさいと、idmatch Smart Caliperは西選手に言い放つ。ならば弊社としては、ここぞとばかりに2018年に大々的に売り出す新製品“SP-01”を猛プッシュするわけです。今でこそ見慣れたSP-01ですが、その奇抜なデザインに当時は距離を置く(様子をみる)販売店さんも少なくありませんでした。それは西選手も同じで「私のお尻は浮気をしないわ」とおっしゃる。それでも「騙されてみたと思って使ってください!」とゴリ押し。そんな経緯のなか、半信半疑で使い始めたSP-01は、見事西選手のお尻にマッチしたのでありました。これには当の西選手も驚きです。そして、いともあっさりとSP-01に乗り換えたのです。(西選手、この浮気は叩かれませんのでご安心を)

西選手愛用のSP-01 KIT CARBONIO SUPER FLOW

その後、サドルのトレンドはショートサドルに移り、プロ選手もショートサドルを好んで使うようになりました。selleITALIAで言うところの“BOOST”シリーズです。弊社もidmatchのL3カテゴリーのBOOSTサドルを西選手にテストしてもらったのですが、西選手の言葉通り、彼女のお尻は浮気をすることはありませんでした。そう、前乗りポジションを取れて、パワフルなペダリングがしやすく、小柄な西選手にはショートサドルがフィットすると思いきや、ノーマルサイズのSP-01が西選手にマッチしたのです(しかもLサイズです)。selleITALIAの主張通り、ヒトのカラダは千差万別でありました。

TacxのNEO2Smartでインドアトレーニングに励む西さん。SK PininfarinaにはSP-01が!

以後、日々のトレーニングに、レース本番に、selleITALIAのSP-01は、西選手の指定席として変わることはありませんでした。SP-01を使い続けて3シーズン目に突入した2020年。新型コロナウイルスで今シーズンのレース開催は先が見えません。それでも開幕レースのスタート、その瞬間をイメージして、日々トレーニングに励む西選手なのでした。(おしまい)

selleITALIA ウェブサイト

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