SILCAの名前は、ベテランサイクリストからすると胸がときめくものがあります。イタリアの旧いポンプのブランドで、革のパッキンなど補修部品が充実しているため、永く使えることも一因ですが、何と言っても独特な雰囲気があり、味があります。事実、外見はかなり疲れた様子を醸しながらも、ワンストロークで「ズバッ」とエアが入るPISTAやSUPER PISTAは、今も世界中のサイクリストとともに現役として活躍しています。

そんなSILCAですが、創業100年を前に会社は大きく変わりました。簡単に言うとイタリアからアメリカに国籍が変ったのです。この変革は、旧いブランドの良さを残しながら「革新」の要素を取り込みました。その結果、SILCAはブランド力を保ちながら、自らのステージを上げるポテンシャルを持つことになったのです。

そして結果は直ぐに現れました。ブランド創業100年を迎えた2018年、SILCAの代名詞たるポンプを軸に各種工具を発表。それだけではありません。新アイテムの優秀性を証明する場として、個人ロード世界選手権3連覇を達成したスーパースター、ペーター・サガン選手を擁する「ボーラ-ハンスグローエ」の機材（工具）サポートを実現。この驚愕の展開に、昔のSILCAを知るオールドファンは腰を抜かしたかもしれません。そして2019年にはEF Education First Pro Cyclingのサプライヤーとしても名を連ねました。

その結果、SILCAはブランド力を保ちながら、自らのステージを上げるポテンシャルを持つことになったのです。商品ラインアップもポンプに加えて3Dプリンタで製造したチタン製のコンピュータマウントや、チタン製のストロー、ナノスケールでチェーン表面を二硫化タングステンコーティングするルブリカント、エアロ効果が期待できるソックス、そしてリサイクルカーボン繊維を配合したシーラントなど、ユニークなものを矢継ぎ早に投入します。

この新たなる商品群に一貫性がないと感じるかもしれませんが、実はこれらすべて、SILCAのCEO、Josh Poertnerが提唱する“Marginal gain（マージナル・ゲイン）”のコンセプトで開発されたもの。

ではMarginal gainとは何か。

それはいまやビジネス界でも使われる言葉で、言うなれば1％の戦略。細部の改善を積み上げることにより全体のポテンシャルが底上げされる考え方で、かつてのチームスカイが導入したことにより、決して強豪とは言えなかったイギリスの自転車チームを常勝軍団に導いたことでも知られています。

SILCAは新たな商材開発にあたり、常にMarginal gainを心掛けています。プロフェッショナルライダーはもとより、世界中のサイクリストがSILCAの製品を使うことにより、自転車が持つポテンシャルをフルに引き出し、その楽しさのステージを上げるために。

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